停止車両評価を用いた運転リハビリをマンガでご説明Vol.1
目次
回復期以後の運転リハビリの流れ
脳卒中後のリハビリで、ある程度の機能回復が固定化してくる時期があります。発症から3ヶ月がピークとなり、緩やかな回復をしてくるのが6ヶ月まで、高次脳機能障害はもう少し回復曲線が長引くとされています。障がいが軽度の場合には、在宅生活に戻ることはそれより早くなりますが、運動麻痺などの後遺症が残ると日常生活の自立に主眼が置かれるので、車の運転までリハビリが完了しないというのもよく聞かれます。運転は生活に直結した移動手段で、地方に暮らす私たちにとっては、当たり前の生活行為です。運転しない日を1日つくることも可能ですが、仕事をする上では公共交通機関で完結するのは勤務先の条件を整えなければならないので、予めそのような立地条件の良いところで務めることを想定するしかありません。しかし、脳卒中のような突然の発症で、入院治療を余儀なくされ専門的なリハビリを必要とする場合、運転が生活や仕事、そして家計に大きく影響するのが実情かと思います。可能な限り運転したいし、復職したいと考えるのは当然のことですが、残存する障がいの程度や運転に対する影響等を確認することが何より大切です。てんかん発作の影響などはかかりつけ医の先生にしっかりと診断いただいたのが良いですが、運動麻痺や高次脳機能障害について運転に与える影響は案外、実体験として結びつかずに説明を受けていることも多いかも知れません。安全に納得できる運転リハビリを進めたいという思いで、365日室内に車環境に近い環境を設定して、視野情報の理解や運転操作能力を確認できるならと考えていました。リアルな体験は運転のイメージに近づくことができるため自己理解も進むと考えています。その意味では運転シミュレーターも有効な評価方法だと考えていますが、トレーニングプログラムとしてよりは評価ツールとしての活用が多いかと思います。今回はトレーニングプログラムも含めた運転リハビリについてマンガとしてご紹介致しますので、ご一読下さい。
場面設定
①青木さん(軽い左運動麻痺と高次脳機能障害がある高齢男性)
②中野さん(がんの入院治療後、しばらく運転していない高齢女性)
③通所リハ(通所介護)のリハスタッフ(同)
④ラシエイドの作業療法士
高次脳機能障害のリハビリは納得一番!
今回、マンガでご紹介するのは、高次脳機能障害を患った男性で、軽度の運動麻痺がある方としています。特に左側半側の視野情報が認知できないけれど、頑張ったら運転できるのでは?と考えている方の例です。当然回復期病院では、神経心理学的検査で、危険ですと説明されているのですが自分の体験としてつながっていなくて生活期の通所介護事業所でどうしたものかと困ったというシチュエーションです。
高次脳機能障害と左運動麻痺のある青木さんは、回復期リハ病院を退院して自宅近くの通所リハビリに通っています。主治医の先生やリハビリ専門職からは、注意障害と半側無視、運動麻痺があるので、運転は難しいと説明を受けていました。しかし、ご本人はしっかりリハビリを続ければ運転できるようになる!という気持ちが強く、神経心理学的検査や病状の十分説明は受けたけど、運転が出来るようになると信じていた方でした。
ご本人のモチベーションは高く自信過剰気味ですので、あまり意見を取り入れてくれないので、介護事業所のスタッフはできる限り説得するのではなく納得してもらい、運転が難しいということを理解して欲しいと考えてました。インターネットで検索すると弊社(ラシエイド)が検索されて、運転能力評価ツールがレンタルできるということを知り、オンラインでラシエイドからご説明させていただきました。
停止車両評価ができるPREDRシリーズです。
本田技研工業株式会社安全運転普及本部と共に開発した停止車両評価を、病院や通所事業所をはじめ訪問先でもご本人用にレンタルしていただき、安全に室内で車環境を整え365日のリハビリ用として活用していただきたく開発したものです。開発には、徳島県ふるさと起業家支援補助金でクラウドファンディングで101.3万円を、READYFOR社のクラウドファンディングで53.5万円をご支援いただきました。また、無償の技術提供いただきました運転リハビリを支援する企業様にもご支援いただきました。本当に感謝しかありません。是非ともご活用いただければと思います。
リアルなハンドルやペダル、ミラー
停止車両評価の車両感覚測定用の専用スケール
ペダルの踏み換えや持続を測定できるツール ※PCとロジクールG29が必要ですので必要があればセット品をお送りいたします。
高次脳機能障害のリハビリは納得一番!
室内でもハンドルやアクセル&ブレーキペダル、ミラーを設定して、運転場面を室内で再現すると、やはり左側が見えていないことがわかり始め、ペダル操作も注意障害の影響を受けてムラが多く出ることが体験として染みこんでいきます。
「勝手に運転すれば困る」という意見を聞くことがあります。正しく危ない場合は過度の期待を持たせてはいけないという判断も十分分かりますが、一歩踏み込んで安全に運転能力評価を提供することで納得していただくことのリハビリテーションはすごく大切なことだと考えています。「ダメ」ということは簡単にできますが、何故ダメなのかということを理解していただくには体験が大きな役割を担っていると思いますので、安全に体験して考えて自分自身と向き合って前向きに生活課題に向き合えるようにご支援できればとそのような思いを込めて開発した商品です。
最上級のパッケージとして考えるのは、停止車両評価と運転シミュレーターが共にあることだと考えていますので、条件が整えば実際の動かさない車での停止車両評価、運転シミュレーター(Hondaセーフティナビを推奨 ※販売元の株式会社マネージビジネスと連携しています)を運転リハビリ評価の柱として据えていただければと思います。
今回は、
安全に自己理解をするために!
運転能力には危険なゾーンに突入してしまうことがあります。それは、障がいや疾病の影響もあるでしょうし、感情のコントロールということもあります。認知症の疑いのある場合や適切な判断能力が低下した場合は安全な内に代替手段の検討と、生活支援の方法を提案していくこととなります。なかなか、発見出来ない場合もりますが、青木さんのように障がいが運転に確実に影響を与える場合、正しい自己理解につながるようリハビリを進めていただきたいと考えています。ただ、それぞれのご判断があるので、その中でベストな道筋でご支援いただければと思います。今回、運転能力を確かめるための室内評価を提案していますので、ある一定期間の体験を通じて運転することにご自身が置き換えることができるようになったということが大きく、自分はもう運転はできないけれどという言葉につながっていますし、一緒にリハビリをした中野さんにエールを送っていらっしゃいます。過去の自分を引きずらないという障害受容というリハビリ業界ではよく教えられた言葉に集約しますが、そのような自分を受け入れたということだと思います。ラシエイドは、運転能力評価を安全な体験を通じて適切な自己理解へとつなぐ、つまりは納得していただくことを提案しています。
是非ともご用命下さい。
次回のcolumnでは、がんの入院治療後の運転リハビリについてご説明いたします。